キューバの野球事情とドラゴンズ
昨年(2020年)ソフトバンクのリバン・モイネロが東京オリンピックのアメリカ大陸予選出場の為にキューバに帰国することがありました。「この大変な時期に離れるのが申し訳ない、戻って来た時には、いいパフォーマンスが出せる様にしたい」とコメントを寄せ、野球ファンからSNSを通じて賞讃をされ、ひいきチームの垣根を越えたエールを交換などもあり、心温まる一件となりました。
複雑なキューバの野球事情
キューバの野球は国内でキューバリーグを行っていますが、社会主義国家で国民全員が公務員の為、わずかな稼ぎにしかなりません。現在もアメリカと国交断絶をしているので、MBLでプレーをするには亡命をするしかありません。
2020年末、ソフトバンクのオスカーコラス選手が、日本を離れてキューバへ帰国するはずでしたが、隣国ドミニカへ入国して、その後、アメリカへ亡命したことが分かりました。
DeNAのグリエル選手も、日本のDeNAで活躍後したその年の暮れ、アメリカへ亡命をしMBLで活躍しました。
獲得ルートのパイプ
その、キューバ選手の獲得へのルートを作ったのはもちろん、中日ドラゴンズです。キューバ政府と交渉をして独自のルートを築きました。最初はキューバ選手を招き、ウエスタンリーグで対戦。あまりの強さにウエスタンの選手が金属バットを使用したエピソードが残っています。そして、あのキューバの至宝、オマール・リナレスの獲得を発表し、驚かされました。
若い選手を日本で育てる
現在も、キューバから4名が在籍中。絶対的守護神、ライデル・マルチネス、アリエル・マルチネス、ジャリエル・ロドリゲスと若い選手を獲得し育成をしてきました。しかし、ダヤン・ビシエドはアメリカに亡命をしたキューバ人です。
ソフトバンクも地道に獲得ルートを築いてきました。しかし、先述したように亡命するリスクがあるので、選手の獲得判断に難しいようです。本人ではなく、キューバ政府との交渉が必要で、決して契約の事はスムーズにいくとは限りません。
キューバ政府にとって、若い選手を日本に派遣する長所は、もちろん外貨を獲得する事と、もう一つは日本に若い選手を派遣し、育てて欲しいという思惑があります。
ドラゴンズのアリエル・マルチネスも表ざたにはなっていませんが、どうやらキューバ関係者から、「捕手で育てて欲しい」と契約をされていると聞いています。ドラゴンズとしては外野手として使いたかったのは山々でした。与田監督もずいぶん、悩んだことでしょう。
お互い有益なことばかりではありません。
しかし、このように、キューバ選手が海外へ出てプレーする機会が増えると、当然、キューバ構内の野球レベルが低下してきます。ひと昔前は、キューバ野球は無敵でした。
特に90年代は、タレントが揃い、リナレス、キンデラン、パチェコ、のクリーンアップは破壊力抜群でした。国際大会151連勝というとてつもない記録を打ち立てました。
(ちなみに連勝記録を止めたのは上原浩治)
事実、東京オリンピックアメリカ大陸予選で敗退となっています。
キューバの野球レベルを上げるには、ドラゴンズの役割は重要です。若い選手を日本で育て、自国へ戻すのです。そんな、ドラゴンズで育ったキューバ選手と侍ジャパンが国際大会での戦う姿を見てみたい。