筏で亡命した苦労人バルデス
ドミニカ共和国に懐かしい顔がありました。元、ドラゴンズのラウル・バルデスです。
この2021年の東京オリンピックに野球代表として来日したのです。
ドラゴンズ入団
2015年に森繫和ヘッドコーチの目にとまり、ドラゴンズと契約。
初年度は、いいピッチングをするも勝ち運に恵まれず、中4日の登板もこなし9先発をしてクオリティスタートを8度達成するも勝利が付かず、0勝4敗。広島戦で10試合にして初めて勝利を上げました。この年は22試合に登板し、5勝8敗でしたが防御率は、3.18と安定した投球を見せていました。
しかし、翌年も、6勝7敗 防御率3.51の成績を残すも、何故か勝ち星に見放されていました。
中1日で先発
2017年のシーズンを迎えると、勝ち運は更に見放され、9試合でクオリティスタートをクリアしますが勝てず、7回まで1点に抑え自らホームランを放ってもリリーフが打たれ勝ちが付かないゲームもあるなど、防御率2.01に抑えながらわずか1勝と勝利に結びつきませんでした。そんな、バルデスに同情の声が集まり、投手部門で菅野に次ぎ2位で選出され監督推薦でオールスターに選ばれました。これは異例の事と言っていいでしょう。
その声にバルデスがオールスターで答えます。シーズン中のゲームから中1日で先発登板し好投しました。
好投しても勝てない
バルデスの特徴は、テンポの良い投球スタイルでどんどん投げ込んできます。その証拠に2年連続でスピードアップ賞を受賞しています。最高球速は137キロと早くありませんが、テークバックが短く、タイミングが合わず打者が差し込まれるシーンが多くありました。非常にコントロールと球にキレがあり、見逃し三振が多いのが特徴でした。
しかし、なんと言っても勝ち運のないピッチャーでした。
筏に乗って亡命
バルデスは苦労人で、キューバ出身ですがメジャーリーグを目指し、筏に乗って亡命を試みました。失敗の度に刑務所に入れられる事4回。5回目にしてドミニカに脱出。しかし、その時、亡命の手助けをした兄は10年間、刑務所に入れられました。
亡命後も何度か挫折を繰り返し、32歳の時に初めてメジャーリーグに昇格しています。
今でもやっぱりバルデスはバルデスだった
そして、今回の東京オリンピック、予選の韓国戦に先発。現在43歳ですが、その投球術は未だ健在でした。
打たせて獲る、変幻自在の小気味いいい投球で6回まで1失点の好投。見方も、元、巨人のフランシスコの特大ホームランなどで3-1とリード。
しかし、9回に韓国が反撃、同点に追いつくと、2死2塁からキム・ヒョンスのライトの頭上を越えるタイムリーを放ち、劇的なサヨナラ勝ちをおさめました。同点打を打ったのが、元、中日のイ・ジョンボムの息子、イ・ジョンフでドラゴンズとの縁を感じました。
そして、ここでも、やっぱりバルデスは、勝ち運がありませんでした。
今でも、やっぱりドラゴンズ時代のままのバルデスでした。