宇野勝ヘディング事件の真相

1981年8月26日の出来事でした。

当時のジャイアンツは前年から、158試合完封負けがなく、ジャイアンツキラーの星野仙一が「この俺がストップさせてやる」と意気込んでいました。

そして、星野は密かに、子分の小松辰雄と、どちらが先にジャイアンツを完封するのか？と賭けをしていました。

ジャイアンツの円熟期

当時の主力選手は1番松本、3番に篠塚、4番に原辰徳が座り、中畑、山倉らがレギュラーに定着。投手には江川、西本、定岡の三本柱と抑えの角が居て万全の投手陣を形成、ジャイアンツは黄金期を迎えていました。

中10日空けて巨人に先発

ジャイアンツキラーの星野はもう、晩年で、直球の球速は128キロながら、変化球を操り、的を絞らせない投球で、王者ジャイアンツに気迫で向かっていきました。

夕食を取りながら、家族と一緒に、この試合を生中継で観戦していました。

今では信じられませんが、当時、80年代のあの頃はまだ、巨人戦は全試合、日本テレビが全試合を中継していました。

得点は2－0でドラゴンズがリードし、先発の星野仙一は6回まで、2安打しか許さず、完璧に抑えて完封ペース。

星野の怒りの矛先は何処？

7回の裏ジャイアンツの攻撃は2死2塁で、藤田監督は、松本に代えて代打に山本功児を送りました。しかし、山本の打球は、力のないショート後方のフライ。

投手の星野もベンチに帰りかけ、宇野も捕球体制に入って上を見上げたその時、スパイクの歯が人工芝に引っ掛かりそうになりよろけた瞬間、宇野の右層頭部に打球が当たりました。

打球はそのまま、大きく跳ね上がり、カバーに入ったレフト大島の後方に転がってフェンス直前まで到達。

その間に2塁ランナーがホームに帰り得点が入り、そして打者走者の山本もホームに向かいました。しかし、レフトからの返球でアウトとなり同点は免れました。

この時、ホーム上での星野仙一のグラブを地面へ叩きつけるシーンが、テレビで映り、話題になりました。

当時の記憶

このシーンは後に珍プレー好プレーなどで、何度も笑いを誘い、プレイバック放送されますが、当時の生放送では放送席、場内からの笑い声などは無く、通常と同じような放送内容と記憶しています。

それどころか、カバーリングに入った大島から、返球を受けた正岡のスムーズなバックホームで、打者走者をホームで刺した中継プレーは見事でした。

当時、私が思ったのは「なんて硬い石頭なんだろう」感じたのと、星野が完封できなかった口惜しさが残りました。

カマを掘った宇野

この試合終了後、星野が宇野を食事に誘いましたが、さすがに、宇野は行く気になれず断ったそうです。星野の人柄が伺えます。

余談ですが、以前二人で食事に出かけた時、宇野が車で、星野の車の後方に追突したことがあったそうです。

レフトスタンド上段にホームラン

あまり知られていない、話ですが、翌日の試合で、この当事者の宇野が西本から、レフトスタンド上段にホームランを放ったのを見て、あのプレーを翌日に引きずらない宇野は大物だと感じました。

ちなみに、この試合の後のジャイアンツとの試合で、小松辰雄が見事完封勝ちを収め、星野から10万円をゲットしたそうです。